前の居住者が部屋の中などで死亡した住宅は「事故物件」と呼ばれ、入居者に事前に知らせたかどうかでトラブルなどに発展することも少なくありません。敷地で殺人事件が起きたのに説明がなかったり、事故物件を独自に調べたインターネットのサイトで前の住人が亡くなったことを知ったりして、不動産業者との金銭トラブルになることが多いようです。

 

国土交通省は、令和3年5月に仲介業者などが顧客に対して説明しなければならない項目などを盛り込んだ指針案を公表しました。業者によって判断がまちまちだった説明項目に統一基準を設けることになります。対象は居住用の不動産で、賃貸だけでなく分譲も含みます。

 

入居者への告知の対象は他殺や自殺、事故死、原因が分からない死亡例です。一方、病死や老衰などの自然死は告知の対象外で、事故死で「階段から転落した」といった不慮の事故も免除されます。

ただ、自然死でも発見が遅れて長期間放置されるいわゆる孤独死のようなケースで、特殊な清掃が必要な場合は説明義務が生じます。告知を義務付ける期間は、賃貸の場合は発見から概ね3年としています。特に、高齢者を中心とした孤独死は深刻で、孤独死者数はどんどん増加しており、現在も単身世帯が増えていることからさらに孤独死が増えるだろうという懸念もあります。

 

一方で、安価で入居できる事故物件をあえて選ぶ人もいます。コロナ禍でテレワークが広がるなどして住み替え需要も増えていますが、事故物件への抵抗がないという人も多くいるようです。しかし、事故物件のニーズはまちまちで、首都圏はニーズがあっても、地方は相場の半額でもなかなか借り手や買い手が見つからない場合もあります。

 

国はまだ正式な指針の適用の時期を明らかにしていませんが、事故物件の需要は増え続けており、安心して借りたり買ったりする仕組みづくりが急がれます。