所有者が不明の土地は、誰が所有しているのかが分からない土地で、相続の際に土地や家の名義変更をせず、長年放置をしてしまったことにより発生します。政府は所有者が不明になった土地の相続人を割り出し始めたのに続き、相続登記を義務化することなどを柱とする法案を提出する予定で、成立すれば2023年度から順次施行されます。

 

現在、相続が発生しても登記は義務ではなく、申請しなくても罰則はありません。しかし、所有者が不明の空き家や荒れ地は処分が出来ず、周辺地の地価が下がったり景観が悪化したりする問題や公共事業や民間の都市開発が進まないケースが増えてきたため、政府が対策に乗り出したと考えられます。

 

近年、法務局から“長期間相続登記等がされていないこと”を知らせる通知を受け取る人が増えています。2018年度より政府が登記を促す事業を始め、2020年末には約5万人の相続人が判明したとされています。突然、見ず知らずの土地の相続登記を促す通知に困惑する人も多く、親族との調整に苦労する人もいるようです。

 

こういった通知を受け取る前に、親の所有する不動産をどう相続するか早めに対策を練る必要があります。今年3月上旬、政府が所有者不明土地対策の関連法案を国会に提出するため、あらかじめ知っておきたいポイントを解説いたします。

【1】土地・建物の相続登記の義務化

・相続開始から3年以内の登記を義務化

・登記しなければ10万円以下の過料

※住所変更の際も2年以内の登記を義務付け、応じなければ5万円以下の過料

 

【2】遺産分割協議についての期間設定

・相続開始から10年が経過すると、原則法定相続割合で分ける

 

【3】土地所有権の国庫帰属制度

・国が一定の条件を満たす土地を引き取る

・相続人が10年分の管理費を負担する

※更地が条件で、建物があれば相続人の負担で解体します。抵当権が設定されていない、土壌汚染がないなどの条件があります。

 

 

しかし、遺産分割協議が難航する可能性もあり、誰が相続するか決まらないうちに相続登記の期限が近づいてくることもあります。その際に利用を検討したいのが「相続人申告制度」です。期限までにすべての相続人の氏名・住所等を法務局に申し出る仕組みで、これを受けて法務局が登記をすれば、相続開始から3年が経過しても罰則の対象にはなりません。

 

相続後に売却・賃貸することを検討したり、共有名義にするのであれば固定資産税等の負担割合を決めたりすることも大切です。親の家や土地が所有者不明になるのを防ぐためには、誰が、どれくらい相続するかを早めに話し合うことが重要となってくるでしょう