1 任意売却とは
任意売却とは、自己破産もせず、競売にもかけられず、住宅ローンが払えなくなったとき、現在の住宅価格より住宅ローンの残債の方が上回っているときに、住宅ローンを利用している銀行(金融機関・保証会社・サービサー等)の承諾を得て、住宅を売却する方法です。任意売却後に残った債務については、生活に支障がないような返済金額で債権者と相談することが可能です。
任意売却は、合法的に住宅ローンの返済、督促等の苦しみから逃れる方法です。
1-1 任意売却と競売の違い メリット、デメリット、仕組みについて
住宅ローンの返済が滞ってしまっている物件を売るという意味合いでは、任意売却と競売は似ていますが、その実態は似て非なるものです。
それぞれのメリットとデメリットをまとめました。
売却時に必要な支払も売却代金から支払われる
買受人には立退料を払う義務がない
少しずつ無理なく返済できる
実際にローンが3,000万円あると仮定し、任意売却の場合と競売の場合、どのような結果になるのかをシュミレーションしました。
市場価格の約80%の価格で取引されます
市場価格の約60%の価格で取引されます
1-2 任意売却のデメリット
任意売却には優れた点も多数存在しますが、もちろんデメリットもあります。主な6つのデメリットも紹介をさせていただきます。
①住宅ローンの返済を滞納することが必要
任意売却をするためには1,2か月の滞納ではなく、債務者がローンが払えない状態であることを説明する必要があり、数ヶ月の滞納期間を経て任意売却を進めていくことになるため、債権者からの支払督促に不安を覚える方も多くいます。
②信用情報機関に掲載される可能性がある
住宅ローンを3か月以上滞納すると、信用情報機関に登録される可能性があります。(俗に言うブラックリストに載るということです)信用情報機関へはカードローンや消費者金融などの借入を滞納しても登録されてしまいます。この信用情報機関に登録されると、今後5年〜7年程度は大きなローンを組めなくなります。
③連帯保証人に迷惑がかかる
住宅ローンを滞納すると連帯保証人にも支払の督促、請求が行くことになります。金融機関の督促により、連帯保証人が滞納分を返済してしまうと任意売却はできません。連帯保証人の同意、協力なくして任意売却は成り立ちません。(連帯債務者も同様です。)
④債権者(金融機関等)の同意が必要
任意売却は市場価格に近い金額で販売を行いますが、残債務と市場価格に大きな開きがある場合、金融機関の同意が得られないこともあります。債権者の中には、任意売却を受け付けない先もあるので、そこは経験豊かな任意売却専門業者へ依頼することが成功の近道です。
⑤競売の危険性がある
任意売却は時間に限りがある中での販売活動なので、必ず売却できるとは限りません。自宅が売却できなければ競売になってしまうというリスクもあります。当然のことながら競売になれば残債務は一括返済を求められ、場合によっては自己破産に追い込まれることも考えられます。
⑥任意売却取扱会社に悪徳業者も多い
通常の不動産取引と違い、任意売却はガイドライン等がありません。誰でも任意売却専門などと書くことができるので、中にはモラルの低い悪徳業者も多いのが現状です。
2 任意売却の流れ
では、いざ任意売却をするとなった場合の流れをご案内します。
2-1 金融機関からの督促
住宅ローン等の借入の毎月の返済が滞納すると金融機関から督促の郵便物が届いたり、電話がかかってきます。最初は「督促状」からはじまり、「期限の利益の喪失通知」「代位弁済通知」「競売開始決定通知書」などが送られてきます。
2-2 電話・メールでのお問い合わせ、相談
住宅ローンの返済で、収入減等の理由でお悩みの方、既にローンの返済が滞納してしまっている方。まずは電話・メールや、本サイトのお問い合わせフォームにてご相談下さい。
債権者・金融機関との交渉に精通している当社の相談員が、相談者様の立ち場になって最善の解決策をご提案させて頂きます。
2-3 相談員との面談
当社は、東京、埼玉、千葉、神奈川のエリアに注力した相談を受付けさせております。
当社事務所(東京都新宿区)、ご相談者様のご自宅での個別面談を無料で行っています。
2-4 媒介契約締結、物件の調査、査定
任意売却にご納得頂けましたら、ご自宅を売却活動にあたり媒介契約を締結致します。
不動産の調査、価格の査定はすべて当社が行います。
現地調査・役所調査・法務局等の調査を行い「不動産査定書」を作成し、債権者である金融機関と交渉致します。
2-5 現状把握と解決策のご提案
ご相談者様の収入の状況、住宅ローンの滞納状況や残債務をお聞し、不動産の価格を算定して最良の問題解決策をご提案させて頂きます。
不明な点、疑問などがあれば、ご相談頂けば丁寧に何度でも説明させて頂きますので、ご安心下さい。
2-6 金融機関(債権者)との交渉
任意売却はすべての債権者・金融機関の同意が必要です。
売却価格の調査、担保解除料(はんこ代)の調整、税金等の差押えの解除交渉、引越費用の控除、残債務の返済方法などの交渉や協議を当社の相談員が行います。
2-7 販売活動
売却する不動産を当社が広告、インターネット、不動産会社のネットワークや取引先を通じて、購入希望者をお探しします。
ご相談者様のご要望に応じて、詳細を伏せての販売活動も可能です。現在のまま、住み続けたい場合は、リースバックや親子間売買・親族間売買などのご提案もさせて頂きます。
2-8 買付申込書の取得
当社の販売活動により、購入希望者がみつかりましたら買付申込書を取得します。
買付申込書の金額をもとに「配分案」を作成し債権者との交渉に入ります。
2-9 売買契約締結
全ての債権者から配分案の合意を取付た上で、ご相談者様と購入希望者との間で不動産の売買契約を締結致します。
引渡し日時等、できるだけご相談者様のご要望に沿う形で調整をさせて頂きます。
2-10 引越の準備
売買契約締結後に、ご相談者様が居住中の場合は引越の準備に入ります。引越日は、購入希望者と当社が調整させて頂きます。
2-11 最終配分案確定と債権者最終調整
決済日が決まりましたら、債権者と最終配分案を確定させ売買代金の配分や解除料など、抵当権抹消の最終調整を行います。
3 住宅金融支援機構の任意売却(住宅ローン・フラット35の任意売却)
3-1 住宅金融支援機構の融資住宅等の任意売却
住宅金融支援機構は月々のローンの返済の継続が困難となったお客様に返済方法の変更メニューを用意しています。お客様のご事情から返済方法の変更が出来ずやむなく返済継続を断念せざるを得ない場合には融資住宅等の任意売却をすることで借入の残債務を圧縮していただくこともご検討いただいています。任意売却は不動産競売のような法的手段による強制的な物件処分ではない為、お客様と不動産仲介業者とが円滑な任意売却の実施に向けて協力していくことが必要となります。
3-2 住宅金融支援機構が任意売却を勧める理由
1, 通常の不動産取引として売買される為、一般的に任意売却は競売より高値で売却できることが期待され、借入残高の縮減につながります。
2, 住宅金融支援機構の「任意売却パンフレット」に定める手続きに協力いただける場合、お客様の状況によっては売却代金から不動産仲介手数料や、抵当権抹消登記費用等を控除できる場合があり、また残債務の状況等により、延滞損害金減額の相談に応じられる場合があります。
3, 裁判所による競売手続きと比べると、任意売却の場合、ご自宅の引渡し時期についての調整がしやすくご自宅から退去後の生活設計が立てやすくなります。
3-3 住宅金融支援機構の任意売却手続きの流れ
1, 「任意売却に関する申出書」の提出
任意売却の手続きに入る前に、仲介業者を選定し機構へ「任意売却に関する申出書」を提出します。
2, 物件調査、価格査定
仲介業者は、物件調査を実施した上で調査結果に基づいた価格査定書を機構へ提出します。
3, 売出価格の確認
お客様のご意向を考慮し、仲介業者の査定価格を承認できるかどうかを確認の上、機構より売出価格が通知されます。
4, 媒介契約の締結
お客様と仲介業者との間で、専任媒介契約を締結します。
5, 販売活動開始
仲介業者は広範な販売活動を行い、定期的に「販売活動状況報告書」を機構に提出します。
6, 購入希望者選定、抵当権抹消応諾の審査
購入希望者が現れた場合、抵当権抹消に応じることができるか機構が審査をします。
7, 売買契約の締結
機構が抵当権抹消を承諾した後、お客様と購入希望者との間で売買契約を締結します。
8, 代金決済、所有権移転、抵当権抹消
売買代金の決済、抵当権抹消書類の引渡しを行います。
*住宅金融支援機構の任意売却手続きで、民間の金融機関による任意売却手続きと大きく違うところは、「任意売却に関する申出書」が必要なところです。さらに、販売活動開始されると、購入者が現れるため、仲介業者は毎月一回「販売活動状況報告書」を提出する必要があります。
3-4 住宅金融支援機構との交渉について
住宅金融支援機構は2007年(平成19年)4月に、旧住宅金融公庫の業務を継承しました。
旧住宅金融公庫では住宅ローンを直接融資していましたが住宅金融支援機構では一部の民間金融機関による貸付が困難な分野のみに直接融資を限定し、その他の一般的な住宅ローンについては民間金融機関が長期固定金利の住宅ローンを提供できるよう資金の融通を支援しており保証業務が主な業務となっています。
住宅金融支援機構の借入の場合、専用の「任意売却申出書」を提出すれば6ヶ月の滞納をしていなくても任意売却が可能です。任意売却申出書の提出先は滞納前であれば借入をした銀行の窓口、滞納中であれば住宅金融支援機構の債権回収を担当している債権回収会社へ提出することになります。住宅金融支援機構は任意売却に積極的に取り組みをしており、2~3か月滞納しますと任意売却を奨励するような文書が債権者のもとへ送られてきます。
住宅金融支援機構の物件を任意売却で売却する場合は、担当する債権回収会社によっては不動産業者の買取は拒否される場合があります。買主は一般エンドユーザーに限られてしまうことがあります。
任意売却代金から控除される引越費用は上限30万以内で認められる可能性はありますが、フラット35での借入や借入をして3年以内の早期滞納や控除しなければならない諸経費の金額が大きい場合は引越費用が控除されません。
3-5 任意売却が可能な滞納期間など
住宅金融支援機構を除いた金融機関で任意売却による返済を認めている一般の金融機関の任意売却は自己破産などの任意整理を行ったり、6ヶ月間の滞納をしたことにより期限の利益の喪失をすれば任意売却が開始できます。
しかしながら任意売却は一切認めず競売での回収のみしか受付しない金融機関もありますので、あらかじめ金融機関に問い合わせをする必要があります。
販売活動を開始してから3~6か月間経過しても売却に至らない場合には、債権者は競売の申立を並行して進めていきます。競売中でも開札日の前日まで任意売却は可能ですが、実際には開札日の約一か月前までに買主が決まっていないと債権者は抵当権抹消に必要な書類の準備が間に合いません。抵当権者が1名のみであれば時間が押し迫っていても協力してもらえる可能性は高いですが、ハンコ代のみの後順位債権者は手続きを面倒くさがって非協力的なケースが多いです。
3-6 マンションの管理費等の滞納は任意売却代金で清算できるか
マンションの管理費には
①管理費
②修繕積立金
③駐車場使用料
④駐輪場使用料
などの費用があります。
任意売却だとしても上記の費用を任意売却代金で清算しなければならないという決まりはありません。
①、②の管理費と修繕積立金につきましては滞納したままの状態で売却した場合、マンションの管理組合は次の購入者にその滞納金を請求することが認められていますが、実際にはマンションの売却を実現するには債務者が清算して支払いを完了させることが慣例です。
競売の場合は、債務者が支払いをすることは少ないため、ほとんどのケースで落札者が負担することになります。その場合、落札者が落札後に債務者へ請求するケースもあるようです。
③、④の駐車場、駐輪場の使用料つきましては次の購入者への請求権がありません。
4 各金融機関の任意売却に対する傾向・動向
1, 住宅金融支援機構(旧 住宅金融公庫)の場合、政府系金融機関ということもあり、住宅金融支援機構は任意売却に積極的です。また、住宅ローンの残債についても柔軟な対応を期待できます。住宅ローンの取扱窓口は、各金融機関(銀行・信用金庫・信用組合・労働金庫等)となります。
住宅ローンの残債務回収業務は以下の3社です。
株式会社住宅債権管理回収機構
エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社
日立キャピタル債権回収株式会社
2, 都市銀行の場合
都市銀行も住宅金融支援機構と同様、任意売却には協力的です。
住宅ローンを滞納してから法的手続き(競売)に入るまでの期間が住宅金融支援機構に比べて短く、住宅ローンが払えなくなったら早めの手続きが必要となります。住宅ローンの残債務については、柔軟な対応をしていただけますが、最終的には債権回収会社に債権譲渡という手段で債権を売却されてしまう場合があります。
住宅ローンの残債務回収業務は、各金融機関の保証会社や関連会社になります。
三菱UFJ銀行→エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社
みずほ銀行→みずほ信用保証株式会社
三井住友銀行→SMBC債権回収株式会社
りそな銀行→りそな保証株式会社
債権譲渡先は法務大臣の許可を取得した下記のような債権回収会社があります。
エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社
日立キャピタル債権回収株式会社
SMBC債権回収株式会社
オリックス債権回収株式会社
ジャックス債権回収株式会社
みずほ債権回収株式会社
ちば債権回収株式会社
アビリオ債権回収株式会社
3, 地方銀行の場合
都市銀行と同様、任意売却には比較的協力的ですが、銀行によっては任意売却を認めていただけない銀行もあります。このような銀行では競売での住宅ローン回収のみ行っており、債務者にとっては残念な結末になってしまうこともあります。住宅ローンの残債務回収業務は各金融機関の保証会社や関連会社になります。
横浜銀行→横浜信用保証株式会社
千葉銀行→ちば債権回収株式会社 他
4, 信用金庫・信用組合・労働金庫の場合
住宅金融支援機構や銀行とは異なり、任意売却に対する処理、時間等いずれも遅い傾向があります。
住宅ローンが払えない状況になった原因、経緯等を詳しく説明して金融機関に納得していただければ、任意売却の手続きを進めていただける場合もあります。住宅ローンの残債務については、最終的には債権回収会社に債権譲渡という手段で債権を売却されてしまう場合があります。
住宅ローンの残債務回収業務は各金融機関の保証会社や関連会社になります。
信用金庫・信用組合→全国保証株式会社
労働金庫→一般社団法人日本労働者信用基金協会
5 老後破産、年金では住宅ローンの返済ができない(高齢者の住宅ローンを任意売却で解決)
住宅ローンの完済年齢が70歳超えという高齢世帯が多く、定年退職後から住宅ローンを払えなくなるケースが急増しています。
退職金や年金収入の見込みが住宅ローンを組んだ当初の生活設計通りに実現せず、住宅ローン問題に苦しむ高齢者が多くいます。
5-1 老後破産が起きる主な理由
1, 医療費が高額になる
高齢になってからの大病の場合には、公的保険だけでは対応しきれない場合があります。
2, 中高年期を迎えてからの収入減少
老後破産の予備軍の多くは平均的な会社員です。貯蓄もそれなりにしているいわゆる「中流家庭」の人たちが老後資金の見込み違いとなる原因は中年期を迎えてからの思わぬ収入減にあるといいます。終身雇用、年功序列が終わった今、普通に働いていれば年収が上がる時代は終わりました。
3, 年々減少している退職金
数十年前のような大きな退職金は見込めない時代になってきています。老後の生活費として計算されるものに退職金がありますが、近年定年退職金は年々減少しています。退職金制度がない企業も増えているので、当然自分で老後資金を貯めていかないといけなくなります。
4, 定年を過ぎて退職後も住宅ローンが残っている
大手企業では50歳を迎えると勤務していた親会社を退職し、子会社に再就職となり、給与は大幅に減らされます。給与が減らされた中で住宅ローンを支払っていくというのは、今の生活で手一杯の状況で老後の貯蓄などはできないでしょう。高度経済成長で給与が右肩上がりだった時代は、結婚してマイホームを購入するとき、30〜35年ローンを定年の60歳までに返済するというライフスタイルでした。
今の時代定年後で余裕がないのに、ローンだけが残されローンの返済で生活費が足りないという状況になっています。
5-2 老後破産の対策
1, 収入と支出のバランスを事前に把握し老後破産を未然に防ぐための対策を立てておくことが大切です。
収入が年金中心になるのか定年後も再就職するのかというような計画をしておくと安心です。60歳以降の人は男女問わず、医療費がかかる時期でもあるので加入している保険の内容も事前に再確認しておくことも大切です。
2, 人生設計、家計収入計画は、その通りに進むとは限りません。
ギリギリの老後の暮らしが送れたとしても、病気や自宅のリフォームが発生した場合には対応できる準備がないと安心できません。所有されている不動産(自宅)の価値がローン残高より高い評価の場合は売却してローンを完済するというのも一つの手段といえるかもしれません。老後破産をしないために、早めに住宅ローンSOSの窓口にご相談ください。