住宅ローンが絡む問題は非常に複雑で、その内容は多岐に渡ります。
ここでは事例を交えて、どんな解決手段が存在するのかお伝えしていきます。

1 離婚が原因の場合

住宅ローン問題と離婚は切っても切り離せません。

1-1 離婚後、ご主人名義のマンションから元奥様が出て行かない

相談内容

マンションを100%住宅ローンでご主人名義で購入後、12年前に離婚。離婚原因は双方にありましたが、耐えきれず自分1人がアパートを借り家を出ました。元奥様は二人の子供とそのままマンションに住み続けることになりました。離婚訴訟を弁護士にお願いし、元奥様と交渉してきましたが、出ていく気配はありません。

その間ずっとローンの支払をしてきましたが、ご主人自身の生活もあり、もう限界がきて滞納してしてしまいました。元奥様は慰謝料の要求をしてきましたが、そんな余裕資金はありません。

ご主人は家を出た後、体調を悪くし、休職をすることに。そして、退職し、収入が激減。自己破産も覚悟して、競売も考えていました。

とにかく元奥様と離婚し、マンションを売却したいとのご相談でした。

解決方法

ローン残高は2700万円。時価は約2800万円であったが元奥様が住んでいたため、売却困難な状況にありました。

競売となった場合の価格が1700万円位と査定し、それ以上の価格で任意売却することを提案させていただきました。

結果

元奥様が住み続けている状況でしたが、当社で2,100万円の買い希望者を見つけ「購入申込書」を頂きました。

当初から離婚の相談をしていた弁護士を経由して元奥様と交渉をし、マンションを売却しても600万円の残債務が残り慰謝料を支払う余裕はない事、競売になれば強制的に退去させられる事等を説明。

ローンの残債務は、ご主人が親族より一時的に借用し担保の抹消ができました。

元奥様は、別の賃貸マンションに引越するまでの間、所有者に待って頂き、自分自身で選んだマンションに引越することができました。

相談者様、当社(任意売却業者)、弁護士と上手く連携ができた取引となりました。

1-2 再婚し、賃貸アパートに住み、毎月の住宅ローンの返済ができない

相談内容

4年程前に協議離婚をしました。自宅には元奥様とお子様が残り教育費代わりに毎月10万円の住宅ローンの返済をする約束でご主人はマイホームを出て行き、賃貸アパートに住む事になりました。

今年の4月に再婚することに決まりましたが、生活費がギリギリでローンの支払いを滞納してしまいました。

収入の改善に期待できず、支払いは今後も厳しいと思うので「自宅を売却してローンを無くしたいが、任意売却はできるか。」とのご相談でした。

解決方法

ご主人は、住宅ローンの他に借金はなく「個人信用情報」の事故登録されたくないということでした。

物件は埼玉県の郊外の一戸建て住宅でした。早々に査定したところ住宅ローンの残債とほぼ同額の1800万円の金額が出ました。元奥様とお子様の引越費用をご主人が負担することで協力を得ることができました。

結果

事前に行なった物件価格査定で、ローンとほぼ同額の価格が出て、販売活動2週間で購入希望者が現れ、債務が残ることなく売却することができました。

1-3 離婚後、賃貸に出していたマンションを売却したい

相談内容

離婚をしたご主人と共有名義で購入したマンションの住宅ローン。
毎月のローンの支払だけは、別れたご主人から継続して支払を続けてもらっていたが、別れたご主人の都合で返済が滞り、自分自身の収入だけでは、住宅ローンの支払いは困難な為、いつ売却してもかまわないとの相談でした。

離婚する際、少しでも住宅ローン返済金の補填にしたいと思い、自宅を賃貸に出していて、今の入居者が退去をする目処もたたず、売却したくても出来ない事にも悩んでおられました。

解決方法

別れたご主人のローンの支払支援がなくなり、住宅ローンの返済が困難な状態になっている事、賃貸に出しているマンションは簡単に売却できない事の二つがポイントの相談でした。

住宅ローンの支払は、これ以上無理に返済をせずに今後の生活費にあてるべきだと提案させて頂きました。

また、賃貸中の物件は、売却の可能性がとても低くなるので、時間をかけてでも退去の交渉を行うこととしました。

結果

賃借人との退去交渉においては、ある程度の退去料を支払う事を約束し、退去日を確定できました。

賃借人が退去された後、購入者を物件に案内する事が出来、早急に売却することができました。

2 失業・転職が原因の事例

失業や、転職に伴って収入が減り、住宅ローンの支払いが困難になる方も多くいらっしゃいます。

2-1 転職で収入減少、ローンの滞納実績ありで、リスケジュールできず…

相談内容

ご相談者様は結婚して間もなく、都内にマンションを購入しました。

交通の便はよかったのですが、車の騒音や救急車のサイレンでずっと悩まされ、一戸建てへの憧れもあり、マンションを売却し、マンションのオーバーローン分と一戸建ての購入価格分とあわせて、新に住宅ローンを組み、新築一戸建てに買い替えました。

当初、夫婦共働きであり、奥様の収入加算で住宅ローンは問題なく借入ができ、支払いの心配はありませんでした。

しかし、ご主人の勤務先の会社の経営が悪くなり、転職をすることになりました。

異業種の会社に転職したため、職場環境に馴染めず、数か月で退職。その後、再就職先が見つからず、収入減が続き貯金もなくなりました。就職活動を続け、なんとか再就職はできましたが、以前のような収入を得ることはできず、住宅ローンの返済が困難になりました。

銀行にリスケジュールの相談に行きましたが、収入の減少と延滞の実績があり審査が通りませんでした。また、延滞した事により、当初優遇金利で低く借入していた住宅ローンの金利が一般の金利に引き上げられ、毎月の返済も増加してしまいました。

マンションのオーバーローン分が上乗せされているので売るに売れません。
どうしたらよろしいでしょうか。

解決方法

収入減少により、このままでは滞納が進み、競売になる事はほぼ確実です。任意売却をして債務残高を減らし、生活を立て直す計画を立てる事が大切だと提案をしました。

オーバーローンだった為、売却不可能と思われていましたが、任意売却の方法を理解され、前向きに整理していくこととしました。

結果

ローン残高5600万円に対し、時価査定額は4700万円。抵当権者の都市銀行の保証会社と4800万円で任意売却することで合意ができました。

幸い、物件の所在エリアをお探しの買主様がすぐに見つかり売出価格の4800万円で売買契約をすることができました。

約800万円の住宅ローンの残債務が残りましたが、債権者との話し合いで、これからの生活に支障がない程度の分割返済で合意ができました。

2-2 主人が転職で給料減少、別居中の妻(連帯債務者)への支払督促

相談内容

別居中の奥様より「連帯債務者としての立場を解除できるのであれば物件売却時のローン残額を用立ててもよい」というお問い合わせがありました。

ご主人は転職後、給料が減少して、税金および住宅ローンの返済が滞る状態にあり、奥様の強い申出に、ご主人も売却に同意されました。

解決方法

債権者(金融機関の保証会社)によっては、任意売却できない会社もある旨を説明しました。

固定資産税は約1年前より滞納していましたが、自宅の差押はされておらず、市役所で分割納付の交渉を依頼しました。

販売活動は、奥様の拠出される資金でローンの返済ができる販売価格を設定し、スタートしました。

結果

中古戸建として販売活動しましたが、なかなか買手がつかず戸建住宅用地として、地元業者に紹介。売却値は若干低くなりましたが、戸建業者より購入希望があり、契約する事ができました。

連帯債務者として、ここ数年悩んでいた奥様からこれで督促をされることから解放されると感謝のお言葉を頂きました。

3 病気などが原因の事例

病気になり、経済活動ができなくなったり、収入がなくなってしまうことも突如あるかもしれません。

3-1 60歳を過ぎ、大病を患い、仕事ができず返済が厳しい

相談内容

約30年前に司法書士事務所を開設しました。

その後、現在のマンションを20年前に購入して、自宅兼事務所として利用しています。購入時50歳で、期間30年の住宅ローンで3LDKのマンションを購入し、現在は奥様とお子様2人で住んでいます。

60歳を過ぎた時に大病を患い、事務所の経営も以前に比べて精力的に動けず、経営はだんだん厳しくなってしまいました。金融機関にリスケジュールの相談をしましたが拒否されました。

「マンションの価格は相当下落して、債務オーバーとなっていると思うが任意売却で対応できるか教えて欲しい。」とのご相談でした。

解決方法

ご相談者様は、マンションを売却し、売却後に債務が残っても若干の収入と年金からの支払で少しずつ返済していきたいと前向に考えていました。

早く任意売却手続を申請し、売却活動を始めるよう提案しました。
ご相談者様と一緒に金融機関に出向き、担当者と面談し事情説明を行いました。

結果

販売活動スタートして間もなく、購入希望者が見つかりました。
売り出しマンション限定で探していたお客様が売出価格の満額で申込んで頂き、契約に至りました。

お客様の前向な姿勢と早めの決断で手続がスムーズな対応ができました。

4 退職後の収入減が原因の事例

これまでの収入がキープできなくなった状態の時に、不測の事態が起こると住宅ローンの返済が一気に難しくなります。

4-1 リストラ、転職、病気、消費者金融、そして、延滞

相談内容

ご相談者様は、ある上場企業に24年勤務。当時の年収は1,300万円程ありました。お子様がいなかったこともあり、夫婦共働きで平成17年に新築マンションを5,980万円で購入。

毎月のローン返済、マンションの管理費、修繕積立で月30万円の支払をしていました。

リーマンショック後、仕事が減少し、それに伴い収入も約半分になりました。業績不振から大幅な人員整理の中、退職する事になりました。再就職先を探すも40代半ばでの年齢では、なかなか見つかりませんでした。

生活費の補填をするために、カードローンを利用するようになり、その金額も徐々に増えていきました。カードローンの利用額はすぐに一杯になり、消費者金融からも生活費を借りるような状態でした。

その後、友人の紹介で転職先が決まりましたが、相談者様は心臓の病気になり、高額の入院費も重なり、住宅ローンの返済が滞納するようになりました。多額の住宅ローンをかかえ、今後どうしたらよいかわからず相談に来られました。

解決方法

相談に来られた時の住宅ローン延滞は5回。金融機関の保証会社が代位弁済する直前で延滞分の解消ができないなら競売で処理すると言われている状態でしたので、早期に任意売却手続を進める様に促しました。

結果

当社の査定価格は4,980万円でしたが、当該マンションで5,380万円で売出されている物件があったため、債権者と相談の上、5,300万円での販売活動となりました。

2カ月が経過しても申込者が現れず、最終的には金融機関と再度協議をし、申込のあった希望者の4,900万円で売却することになりました。数百万円の債務が残りましたが債権者と相談し、分割で返済をしていくことになりました。

4-2 ご主人が他界、奥様名義のローン返済、定年退職後支払困難

相談内容

一戸建を購入当時、ご主人の所得は低かったようですが、奥様のお母様と同居しようと奥様(相談者)名義で購入し、住宅ローンを組みました。奥様の収入で住宅ローンを支払、ご主人の収入で生活費を負担していました。

一戸建購入して間もなく、高齢のお母様が死亡、その数年後にご主人も病気で他界しました。

そんな中、昨年、永年勤めていた会社を定年退職しましたが、退職金はたいした金額でありませんでした。

退職後、アルバイトの掛け持ちをして何とか住宅ローンを返済していましたが不足額をうめる為の貯金も底をつき延滞が始まりました。

成人し、家を出ていた娘さんにも生活費の援助をしてもらっていましたが、その娘も勤務先を退職し、これ以上は支援も求められません。

ご本人も69才になり、再就職も困難となり、今後の生活についてどうしたらよいのか相談に来られました。

解決方法

年齢的にも収入の増加は見込めません。相談時は、ローンの延滞は5回目で預金もほとんどなく、明日からの生活資金もない状態でした。生活保護受給の提案もし、弁護士の紹介も説明しました。

結果

ご本人の収入では、行政の協力無くして生活が成りたたないと判断され、紹介した弁護士により任意整理を申請することになりました。本人は生活保護受給しながら、親戚宅の一室を間借りしていく事になりました。

ずっとお1人で悩んでいましたが、返済で悩むことが無くなり精神的に落ち着く事ができるようになりました。

4-3 50歳で住宅ローンを組み、65歳で退職、年金ではローンが払えない

相談内容

ご相談者様はバブル景気の中、当時50歳の時、4,300万円の一戸建てを25年ローンを組み購入しました。

その後、65歳で定年で勤務先を退職しました。

住宅ローンはまだ10年残っているので、再就職しましたが、収入は大幅に減少して、毎月のローンの支払が困難になりました。

銀行に相談して返済期間を5年延長し(完済時の年齢80歳まで)毎月の返済額を減額しました。しかし、生活は厳しく、滞納が4カ月になって眠れない日々が続いています。

解決方法

収入が少ない中、必死に住宅ローンを返済してきて貯金は無くこのままでは競売になってしまう状態でした。

住宅ローン残高2,200万円、物件査定価格1,600万円なので債務超過の状態です。減った債務をどのように返済していくのか、法的整理も視野に入れて検討する事をご提案しました。

結果

売出価格1,680万円。3カ月の販売活動で1,580万円で売却が決まりました。

支払いが困難であることを事前に抵当権者と相談していた経緯もありスムーズに任意売却を進める事ができました。

任意売却期間中は、ローンの返済をしていないので、その間の資金で引越代を捻出し、家賃4万円のアパートに引越する事ができました。

残った住宅ローンは、紹介した弁護士との相談で法的整理をして借金がなくなり、年金で生活していくことができる様になりました。