認知症予防となる、成年後見制度と家族信託ですが、導入にはそれぞれ費用がかかります。今回はその導入費用について解説いたします。
1.成年後見制度について
成年後見制度には<法定後見>と<任意後見>の2種類があります。
①法定後見
法定後見は、既に本人の判断能力が低下しているもしくは無くなっている場合に利用するもので、家庭裁判所への後見人選任申し立ての費用が必要となります。この申し立て手続きを本人やその家族で行う場合は、費用は裁判所に納付する印紙代1万円程度で済みます。しかし、必要書類や記入する書類が多く煩雑なので、司法書士等の専門家に申し立て手続きを依頼する方がほとんどです。この場合は、実費に加えて司法書士等への報酬が10~15万円程度発生します。
②任意後見
任意後見は、本人が元気なうちに将来に備え、家族等との間で任意後見契約を公正証書で取り交わす必要があります。この作成費用は、公証役場に支払う手数料2~3万円で、契約書の作成を司法書士等に依頼する場合は、10~15万円程度の報酬を支払うことになります。
2.家族信託について
家族信託を導入する場合、まず公証役場で信託契約公正証書を作成する費用が発生します。これは、受託者に管理を託す信託財産の評価額により変動し、信託財産の評価額が高ければ高いほど作成費用も高額になります。
また、信託財産に不動産がある場合は、不動産登記簿に信託登記をする必要がありますので、信託登記を司法書士への依頼する場合、その報酬も10万円以上かかるでしょう。追加でこの登記手続きの際に納める登録免許税がかかってきます。
家族信託をどのような内容にするか、それをもとに作成する信託契約書作成のコンサルティングを専門家に依頼する場合は、信託財産の大きさに応じて数十万円以上のコンサルティング報酬も発生するでしょう。
成年後見制度も家族信託も、それぞれ費用は掛かりますが、本人や家族の思い、保有する財産によってどちらを選ぶか慎重に決めておくのがよいでしょう。費用が安いからという理由で選んでしまうと、後々、問題や悩みをカバーしきれず困ってしまうかもしれません。相続対策に有効な必要経費と捉えて検討することが大切です。