自宅を購入する際に頭金なしで住宅ローンを組む人が増えています。低金利が続く中で毎月の返済が軽くなっているのに加え、住宅価格の上昇を受けて、家を売却してもローンが残る懸念が薄れているためです。

「頭金なしでローンを借りる」、その背景にあるのは住宅ローン金利の大幅な低下で、変動金利はメガバンクでも0.4%台とこの10年で半分程度になっています。また住宅ローン控除で「借り得」となる場合も少なくありません。住宅ローン控除は年末の借入残高の1%などが所得税等から控除される制度のため、1%以下の金利でローンを組めば支払う利息より控除額の方が多くなることもあります。

 

また、新築物件とともに中古価格が上昇していることも見逃せません。住宅は一般的に購入から年数が経過すれば資産価値が下がりますが、頭金なしで新築住宅を買うと購入後しばらくは家の価値がローン残高を下回りやすい傾向にあります。売却してもローンを完済できず、万が一の際に家計が不安定になりかねません。

従来、頭金を用意するのがセオリーとされてきましたが、最近の中古住宅価格は首都圏を中心に上昇し続けており、ここ数年は自宅を売却したら購入価格を上回った例も少なくないといいます。しかし、この好環境が続くという保証はないため油断は禁物といえるでしょう。

 

住宅ローンの返済では中長期的な金利上昇への備えが大切です。全期間固定金利型は金利が完済まで変わらないのに対し、変動型は短期金利の変動にあわせて通常は半年ごとに金利を見直します。

一般的な変動型(元利均等返済)は金利が上昇しても毎月の返済額を5年間据え置く【5年ルール】、5年後に金利を上げる際は25%増までとする【125%ルール】があります。このため毎月返済額が急増する懸念は少ないとされていますが、要注意なのが完済までの総返済額で、金利が上がると毎月の返済額に占める利息の支払い割合が増え、元金の割合が減ります。元金の返済ペースが遅れる分、総返済額が膨らんでしまうのです。

 

金利が上昇し【5年ルール】【125%ルール】の毎月返済額では期間内に完済できない場合、最後に一括返済を求められるのが一般的です。これを避けるには繰り上げ返済や自宅の売却をする必要が出てきます。また、売却後にローンが残るなら返済資金を手当てする必要があります。頭金なしですでに購入した人は繰り上げ返済等に充てられる資金があるかどうかを確認し、もし不足しているようであれば貯蓄を増やすことが大切でしょう。