時間の経過とともに増えていく老朽化マンションですが、その再生が社会的な課題となっており、その課題を解決するため区分所有法の改正が検討されています。
1.なぜ建て替え決議は困難なのか
建物の老朽化等により建て替えをする必要があっても、現行法では建物の建て替えは容易なことではありません。建て替え決議には所在のわからない所有者も含めた5分の4以上の賛成が必要で、高齢の所有者からすれば「自分が生きている間は壊さないでほしい」といった要望等があるので、なかなか建て替え決議が進まないのです。
2.建て替え決議後の大きなハードル
建て替えが決まったとしても工事がスムーズに進むわけではありません。現行法では契約違反等の正当な理由がなければ退去の義務はなく、建て替え工事のために所有者は借主と個別に退去の交渉をする必要があります。反対している借主がいれば交渉が難航する可能性が高いのです。
3.検討されている改正案の内容とは
現在、下記のような内容の改正案が検討されています。
【建て替え】所有者の5分の4の賛成(耐震性等に問題がある場合は、所在が明らかな所有者の4分の3の賛成)※決議後、借主に半年後の立退き請求が可能に
【リノベーション】全所有者の賛成(耐震性等に問題がある場合は、所在が明らかな所有者の4分の3の賛成)
【建物・敷地売却】全所有者の賛成(耐震性等に問題がある場合は、所在が明らかな所有者の4分の3の賛成)
【被災時の建て替え】所有者の5分の4の賛成(耐震性等に問題がある場合は、所在が明らかな所有者の3分の2の賛成)
特に注目すべきなのは、建て替え決議後、退去しない借主がいたとしても、半年後の立退きを請求できるようになる点です。所有者が立退き費用などを補償することで、賃貸借契約を解除することが可能になります。
これらの改正案は来年国会に提出される見通しですが、導入されれば賃貸人、賃借人にとっては大きな影響となりそうですので、今後の動きに注視していく必要があるでしょう。